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2009年12月01日公開
![山田 武人 [笛吹市教育長]](/column/journal01/article/img/200912_yamada.jpg)
山田 武人 [笛吹市教育長]
〔やまだ たけひと〕
1944年、山梨県生まれ。山梨大学教育学部卒業。甲府市立北新小学校教諭を皮切りに以後38年間、山梨県内の小中学校に勤務。途中、県総合教育センターで部長、副部長、また峡東教育事務所長を務める。2005年3月、一宮中学校長を定年退職後、笛吹市教育委員会学校教育アドバイザーを経て2007年7月より現職
「きらめき ひびき合う」子どもに
「笛吹市学校教育ビジョン」が策定されたそうですが、どのような経緯だったのでしょうか。
数年前に校長会と教育委員会の研修会があった折、ある校長から「教育委員会はどういう教育を学校に求めているのか示してほしい」という発言がありました。学校教育の指針となるものは数多くあったのですが、身近な地域の教育の進むべき方向を新たに指し示す必要があったのです。
そこで、「笛吹市に生まれ育ってよかった」と思えるような笛吹教育を築き上げるために、1年間をかけて丁寧な議論を重ね、現場教員によるワーキンググループで素案をつくり、また、教職員や保護者、市民の皆様からも広くご意見をいただきました。こうして、まさに手づくりの学校教育ビジョンが生まれたわけです。
学校教育ビジョンでは2つの基本目標が掲げられていますね。
「『生きてはたらく力』を身につけた子どもの育成」と「家族や人を愛し、自然や郷土を大切にする子どもの育成」です。
「生きてはたらく力」とは、社会や個人の生活をよりよくしていくために、学んだことを実際の生活に幅広く生かしていける力のことです。文部科学省が提唱する「生きる力」よりはるかに以前から、この地で教員たちが指針として用いていた考えなのです。
この力は、知育・徳育・体育のバランスの取れた教育を通して培われるもので、笛吹市の子どもたちが知識や技能を身につけ、健康で勤勉に働き、思いやりのある心で人と交わり、自他の幸福のために活躍する人に成長してほしいという願いのもとに、そのためには不可欠なものとして目標の1つに組み入れました。
また、子どもたちが家族や地域に見守られ健全に育てられることで、子どもたちの心の中に、家族や人を愛し、笛吹市の自然や地域を大切にする思いがはぐくまれていきます。将来にわたり、いつどこで生活していようとも、家族や郷土を思う心を忘れない人になってほしいという願いがもう1つの目標「家族や人を愛し、自然や郷土を大切にする子どもの育成」に込められています。
学学校教育ビジョンの基本方針と具体的な施策をお聞かせください。
学校教育ビジョンでは、目指す子ども像として「きらめき ひびき合う ふえふきの子」を掲げ、基本方針・具体的施策を展開しています。ここでいう「きらめき」というのは子どもたちが夢や希望に向かって輝いているようすを、「ひびき合う」というのは人とのかかわり合いのなかで、助け合い影響し合い高め合いながら、地域の歴史や風土によって磨かれるようすを表しています。
基本方針としては、「『確かな学力』の育成と学びを深める教育」「しなやかな心と丈夫な体をつくる教育」「豊かな成長を支える教育環境の充実」を掲げています。
具体的にはやはり、基礎・基本の定着とそれを活用する力が身につく授業、豊かな言語環境づくり、一人ひとりに応じた教育の展開に取り組むことです。また、福祉教育・環境教育をはじめ、地域や社会を観る目を養うための教育展開も重要です。併せて、教科の学習とともに、人として自立するための社会性や人間性をはぐくむ教育も必要です。そこでは、自然や郷土に対する気持ちとともに、周りの仲間を大切にする思いも育てられるべきです。さらには、開かれた学校づくり、教職員の力の向上、学校間の連携なども大切な項目として考慮されています。
保幼小中高の連携・交流を密に
保・幼・小・中・高の連携が行われているそうですが、具体的は取り組みは?
これまでは行政区分や公立・私立の違いなど種々の点から困難であった連携ですが、それぞれが抱える教育課題の解決のためにはやはり連携が大切で必要なのです。特に、校種間のギャップが子どもの連続的でスムーズな成長を分断しているのではないか、という課題を克服するためには不可欠な実践だと思います。
私自身、小学校で教鞭を取っていた折、とてもよい卒業生を送り出したのに、中学校のほうでは学校始まって以来のひどい生徒だと批判されたことがあります。1年後にその中学校に異動になり、かつての教え子たちを指導することになりました。子どもたちは成長しているので、小学生のころとは同じではない。変わっていくのが当然ですから、なおさら目で見て対応を考えていかなければなりません。そのとき、連携という発想を得ました。
これに加えて笛吹市では、次代を担う「笛吹市民の育成」や「地域の教育力再生」、さらに「笛吹市学校教育ビジョンの具現化」の視点で、理念的に共通理解を果たしたいと考えています。そのような意識のもと、第1回連携会議が2009年9月に開かれました。
現在のところ、保育園・幼稚園と小学校の連携としては、保育園の年長児が1年生の授業参観をする、園児と1年生の交流会・合同活動を実施するなど、子ども同士の交流のほかに、職員間、園児保護者と小学校教師などの交流が行われています。今後は、入学前の情報交換だけではなく、指導のようすや内容の実態を互いに把握していくことを考えています。
小学校・中学校の連携では、児童生徒連絡協議会を中心に共同作業や互いの行事への参加などを通して、子ども同士の交流が行われています。教員同士の交流は、それぞれの管理職による月1回の定例会、6年生担任と中学校教師による情報交換、互いの授業を見合うことでの情報交換などを通して実践されています。今後はさらに相互で出前授業を盛んにし、小中をつなげた指導への理解を深めていきたいところです。
中学・高校の連携では部活動による交流を中心に、教師による異校種の授業参観や、中学生による高校での体験授業などが取り組まれています。さらに、高校(園芸高校)と保育園・幼稚園の交流もあり、これはなかなか特徴的だと思いますよ。これからも交流のレベルと頻度を高め、笛吹の子どもを育てるという共通の思いを確認し合っていきたいところです。連携会議は今後も定期的に開催していく予定です。
頼もしい学生ボランティアの力
学生ボランティアというユニークな制度がありますが、どのようなものですか。
平成19年4月から開始した学生ボランティア活用事業です。これは、教員志望の学生を市内の各学校で受け入れ、授業や課外活動などの支援をしてもらうというものです。これによって、教員を志望する学生に実務経験の機会を提供することができ、また、児童生徒の学力の向上や学校教育のさらなる充実や活性化を図ることができます。
実際、学校というところは猫の手も借りたいほどの忙しさで、とりわけ校外学習などでは人手が足りずに毎回苦心しているのです。まさに学生ボランティアの力が学校で必要とされているのです。
支援の具体的な内容は?
おもに国語、算数、数学、理科、小学校の英語活動、また、パソコン教室などの TT としての授業支援、放課後の補充学習の支援、夏休み・冬休みの長期休暇における補充学習の支援といった学習活動全般の支援があります。また、社会科見学、林間学校、スキー教室といった校外行事の引率支援、市陸上記録会に向けた練習の支援など、校外活動の付き添いや部活動の支援も行われています。併せて、不登校など、問題を抱える児童生徒の自立に向けた体験活動の支援、介助を要する児童生徒への支援などもカバーしてもらっています。
仕組みとしては、希望する学生が大学に登録カードを提出し、笛吹市教育委員会が窓口となってそれを管理し、小中学校からボランティアを希望する連絡が入ると、ボランティア募集のメールを教育委員会から登録者に送付するという流れです。参加を希望する学生はそれに返信し、教育委員会は学校側に希望学生を紹介するわけです。1回につき2000円が学生に支払われますが、保険を含めてその費用は教育委員会が負担しています。
目下のところ、36名ほどが登録しており、小中学校では大変助かっていると聞いております。また、大学によってはこのボランティア活動が単位となるところもあり、学生の経験の質の向上とともに、大学側も喜んでいるようです。やはり、いまの時代はあらゆる機関や人の手を借りて教育を仕上げていくことが求められているのでしょう。
今後の抱負をお聞かせください。
寺山修二の『さらばハイセイコー』という長編詩の中に「ふりむくな ふりむくな うしろには夢がない」という一節がありますが、まさに前を見て、時代を見据えてどう対応できるのかを考えていきたいものです。
私が新任教師だったときの校長、佐藤賢一先生は、新任教師も一人前として扱ってくださり、新任の授業を見るときは十分な下調べを自らすませて臨んでくれました。保護者、子ども、若い教員、誰に対しても誠実に対応する先生でした。私が校長になったときも、あの佐藤先生のようになりたいと思いましたね。それでこそ人を育てるという教師の仕事が全うできるわけです。
現場を見守る立場となったいまでもその姿勢を失わず、現場にだけ責任を取らせるようなことはしませんから、校長たちには思い切り学校経営に励んでほしいと願っています。
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