教育コラム

第3回

健全な心を育てるには日常生活から

2010年01月25日公開

我が家では、子どもたちが幼いころから、家族が集まって食事をする時間を大切にしてきました。
とはいえ、子どもが成長するにつれ、個々の帰宅時間がさまざまになり、とりわけ夕食のために時間を合わせることはだんだんと難しくなってきました。
それでも、「いかにしてみんなを集めるか」を自分に課せられた使命のように感じていた私は、答えるのが面倒くさそうな彼らに、「今日は何時ごろなら夜ご飯食べられそう?」と、めげることなく毎日声掛けしました。
「家族団欒」というのは「家族の絆を深めるための時間」であるのは言うまでもありませんが、私には子どもたちの生活サイクルが不規則になってきたと感じられたとき、それを「リセットするために必要な時間」に思えたからです。

最近では、大学生の間で「オール」という言葉が普通に使われています。「オール」とは、つまり朝まで遊んで翌日まで帰らないということ。
私たちが大学生のころは家で決められている「門限」を気にして、その時間が近づいてくると慌てて帰宅したものですが、近頃の大学生には一応「門限」はあってもないようなもののようです。
小学生から高校生までは、朝早く起きて登校しなければなりませんが、大学生ともなると、毎朝決まった時間に起きることもなく、日常生活のリズムはバラバラです。すでに大学生の私の息子たちも例外ではありません。

息子は高校のころまで「朝型人間」でした。テニス部に所属していたので、早朝練習に出掛けるため早起きし、夜は部活を終えると、遅くても夕食までには戻り、家族揃っての団欒を楽しむことができました。
大学受験の時期になると、夜遅くまで勉強することもザラでしたが、寝坊しても朝食だけはしっかり食べて学校に出掛けて行きました。
受験生にとって生活サイクルを自己管理、調整するのも勉強のうち。そして、親はその子の状況に合わせて、健康管理をするのが役割です。
受験生のために日常生活の中で親がサポートできることはそれくらいしかないと思えたので、私も結構気を遣いました。
決して料理が得意というわけではないのですが、私なりに栄養バランスの良い献立を考えたり、夜食には好物のデザートを用意したり。
そのうちに、息子が一人で食べるのも味気ないだろうと、毎夜一緒に付き合っていたらとても太ってしまい、受験が終わった後のダイエットはたいへんでした。

小学生のころまでは、とにかく好き嫌いのない子にすることを目標としていました。その後は成長に合わせて、部活に励む時期、受験の時期、それぞれの時期で親のサポートの仕方も変わっていくようです。
ところが、前述したように大学生になると生活リズムは一変します。今や息子たちも「夜型人間」のようです。
午前中、講義がなければ遅く起きてきて、昼頃に出掛けて行き、夜は部活やアルバイト、飲み会などなど。
それでも、どんなに帰りが遅くなろうと、翌日早く起きなければならないときは間に合うように起きて出掛けて行きます。
リズムは狂っているようでいて、彼らはそれを彼らなりにすぐに調整することもできるのですね。私としても、その「調整能力」を信じるよりほかないのですが……。

また、家族の記念日などで、揃って夕食をしようと提案すると、息子たちはたとえオールの翌日であっても、なんとか間に合うよう時間を作ってくれます。
そんなときは、子どものころから大切にしてきた「家族団欒」の時間を彼ら自身も大切に思っているのがうかがい知れ、多少無理と思えてもそのための時間作りにめげることなく努めてきたことが無駄ではなかったと思えるのでした。

生活リズムの調整がきく大学生ともなれば、親の出る幕ではありませんが、高校生のころまでは、朝食をきちんと食べさせたり、夜にはできるだけ、家族揃って楽しく食卓を囲めるようにしたいものです。
そんな日常のたわいもないひと時が、子どもたちにとっては心の財産とも言うべきかけがえのない時間となり、家族に支えられているという安堵感にも繋がるように思います。

私なりに心掛けてきた「家族団欒の時を持つため」の3か条です。

1.難しいと思えても諦めることなく、家族の時間を合わせるよう試みる。
2.食事のときはできるだけ、楽しい話題を提供して場を盛り上げる。
3.献立を工夫して「美味しい!」と満足してもらえるようにする。

当たり前のことと思われるかもしれませんが、これらを日常的に心掛けるには、結構根気が必要です。

家族とともに食事をすることで、たとえ学校で辛いことがあったり、成績が伸びず悩んでいるときでも、食欲が沸いてくるというものです。
私は幸いにも本の制作のために多くのトップランナーと会い、貴重な話をうかがっていましたので、息子たちの話題に合わせながら、機会を見てはさりげなく彼らを勇気づけ、元気づけられるような話をして聞かせていました。
そして、私が一生懸命手作りしたものを食べることでなお一層機嫌もよくなり、自然と聞く耳を持ってくれたようでした。

子どもの健全な心は日常生活を充実させることから育つのだと思っています。
それが、たとえ大学生になって多少(?)-私から見れば- ルーズな生活になってしまったと思えても、基本的なところでは、「家族団欒」を大切に思い、彼らの心の支えとなっていて、そこから「生きる元気」をも得ることができると、私は確信しています。
息子たちがそうであるように……。

余談ですが、料理を作ることが大好きな長男は、最近ではいろいろな食材を工夫してはさまざまなレシピを試みているようです。
先日は、「受験生のころ、夜食に作ってもらったスープ、懐かしいから挑戦してみた」と言っていました。
日常生活の中で、親が愛情を持ってしていたことは、たとえ目に見えなくても、息子の心には確かに響いていたのですね。

第3回コラムは「健全な心を育てるには日常生活から」をテーマにお話しました。
このテーマについて、私は日頃からスタッフの石井さんとよく話をしています。幼児教育に携わる石井さんは子どもたちの日常生活の優先順位が変化してきていることを感じ、子どもたちの将来が心配になるそうです。
今回の夢プロスタッフは石井さんに登場いただきたいと思います。

◆今月の夢プロスタッフ
石井久美子 (夢さがしプロジェクトスタッフ、ピアノ講師・都内幼児教育教室非常勤講師)


はじめまして、石井久美子です。
人間にはさまざまな欲求がありますが、アメリカの心理学者マズローによれば、その欲求をピラミッド型の5層に分けると、根底にあるのは人間が生きていくために最低限必要な食物、排泄、睡眠など、個体として生命を維持するための欲求とされています。この一番目の欲求が十分に満たされて育たなければ、その次の段階の成長がうまくいかないそうです。

私たちが子どものころは、「あたりまえ」に、親の作った朝食を食べて学校に出掛け、夜は「子どもは早く寝なさい!」と言われて渋々布団に入ったものでした。ところが、最近は朝食を食べずに学校へ行き、夜は自分の部屋で携帯やゲームで夜更かしする子が多くなってきたように思います。
受験生ともなると塾に行ったり、夜遅くまで勉強するなど、毎日の生活リズムを作る事がなかなか難しくなります。睡眠のサイクルを安定させてあげるのも、親の重要な役割だと思っています。

そのためにも、まずは一日のスタートである朝食をきちんと食べさせること。このごろは働くお母さんも多いので、なかなかたいへんだとは思いますが、子どもの心と体を健全に育くむためにも、大切に考えてほしいですね。

私が講師を勤める幼児教室では、もちろんきちんと食べてくる子がほとんどなのですが、ここ数年、朝ごはんを食べてこない子が出てきました。理由を聞くと「だって、ママが起きないから」とか「ぎりぎりに起きたから車の中でヨーグルトだけ食べた」などと言います。
また、食べたとしても菓子パンをママが寝ていたのでゲームしながら食べたという子もいて、これでは家庭の中での食卓風景が浮かんできませんね。

家族で楽しみながら囲む食卓は、親子のコミュニケーションを深めるために大切な場でもあります。
朝食を食べてこない子は野菜の名前もよく知らなかったり、好き嫌いも多かったり、食べ方のマナーもよくありません。そして、箸も上手に持つことができません。これらは,毎回の食卓で親が根気よく教えるべきことなのです。

すでに社会人となった私の息子は,ある時宴会の席で上司にお箸の持ち方が上手なことと食べ方がきれいだと褒められたそうです。
そして私に「それからはいろいろな人と食事をするたびに、人のお箸の持ち方が気になるようになった。お箸の持ち方が上手な人は見ていて気持ちがよい。なぜ、親があんなに食事中に注意したかわかったよ。」と言いました。
息子たちに「肘をついちゃだめ! 片手があそんでいるよ!」などとよく注意をしてきたことが、今に役立っていることを知りうれしくなりました。

“あたりまえ”のことをもう一度見直してみてほしいと思います。この「あたりまえ」が子どもの成長を健やかにし、考える力の源になります。そして、親にとっても“あたりまえ”をしてあげていることが子育てへの自信となり、子どもとさまざまな問題に立ち向かう力にもなるのではないでしょうか。

石井さん、ありがとうございました。次回夢プロスタッフはカルチャーサロンを営み、お母さんでもある小泉敦子さんにお話を聞きたいと思います。お楽しみに!

◆今月のトップランナーからのメッセージ
フェイシャルセラピスト かづきれいこさん 『菅原亜樹子著 夢さがしエトセトラ』より


「大人たちには、自分たちが子どもたちに何をすべきか考えてほしいです。そして何より子どもが元気に生まれてきたことに感謝。元気が一番!まずはそのことに感謝してほしいと思います」

かづきさんは幼い頃、心臓が悪く、冬になると顔が真っ赤になり「赤でめきん」と言われいじめにもあったそうです。その辛い経験から人を綺麗にするためのメイクではなく、心を元気にするための「リハビリメイク」を作り出されました。ご自身の経験から、子どもたちにはいつもニコニコと笑顔でいられる生活をしてほしいとお話しています。
「子どもたちが笑顔で日々を過ごすために、何をしてあげられるか」と、母親として常に気にかけていたいですね。

菅原 亜樹子

菅原 亜樹子

〔スガワラ アキコ〕

エッセイスト。1959年、東京都生まれ。幼少期をニューヨークで過ごす。学習院大学文学部卒業後、富士銀行(現在、みずほ銀行)に入行、本店外国為替部に配属。退社後に結婚し、2児の母親である。「夢さがしプロジェクト」代表。日本キャリア開発協会会員。全国の学校や公共団体に招かれ、生徒・父母、および教育関係者を対象に講演活動を行っている。2006年、若者の夢さがしを応援する任意団体「夢さがしプロジェクト」を設立し、さまざまな企画を考案し、全国で実施している。学校でのキャリアカウンセリングも担当する。

著書に、『だから、一流。』(学研)、『夢さがしエトセトラ』(真船貴代子との共著/紀伊國屋書店)、『夢さがし こうして私は自分と出会った』(芸文社)がある。

◇ 夢さがしプロジェクト(http://yumesagashi.net/)

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